5万人が住んだ「国でない場所」~九龍城砦
2012年 04月 20日
啓徳空港の目と鼻の先
6階建てしか許されていなかった九龍地区で、14階もの高さを違法建築していたこの上を
1日何十もの飛行機が、すれすれに飛行していたといいます。
九龍城砦(九龍城寨)
返還とほぼ同時に姿を消した、史上最大とも言われる高層スラム
1899年に英国へ租借された際も「飛び地」として中国領として残されたこの小さな地区は
やがて英国も中国の法律も適用されない、無法地帯と化していったのです。
横から見ると大きなコンクリートの塊のような九龍城砦
上から見れば小さなビルの集合体のような構造です。
法律が適用されないのを理由に、流れ込む難民や不法滞在者増加とともに違法増築される建物
最終的には5万人以上が生活されたというこの場所の人口密度は、一畳に4人という高さだったとか。
むき出しになった電気やガスの配線、窓もなく一日中太陽の見えない部屋、
そして「~街」と呼ばれる通りも、暗く湿った建物内の細い通路がほとんどだったそうです。
1つの「街」として確立していたこの中には、ありとあらゆるものが存在していました。
学校・寺院・老人ホーム・・・商店・床屋・病院・工場・・・・
中でも目立っていたのが、食品工場と病院。
無法地帯であるがゆえに、無免許や中国でしか通用しない免許でも開業できたからです。
また衛生上許可が下りない条件でも操業でき、かつビザなしでも人を雇えた食品工場
でも香港の街で売られる魚丸や飲茶の點心、当時のほとんどがここ九龍城砦で作られていたとか。
狭い部屋に何人もの家族が一緒に住むのは、ここだけに限らず香港では普通のことですが
3ヘクタールに5万人が住むのですから、4畳ほどの部屋に数人で住むのが普通だといいます。
ましてその部屋というのは、1軒の家を間切りして貸し出すスタイル
ちなみにこのスタイルは現代の香港でも存在しています。
旺角などの中心部にある雑居ビル、こういう古い建物では今でも見られる光景です。
土地が狭く家賃が高い香港ならではの・・・・これも住宅事情でしょうか。
自宅からさほど遠くなかったけれど、主人もここを訪れたことがないようです。
「一度足を踏み入れたら二度と出られない」
なんて表現があったほど、密集して複雑だった高層スラム。
現地の子供から見ても、ちょっと怖いそんな場所に映ったみたいですね。
“でもあそこには腕のいい歯医者がたくさんいたという噂だったよ”
その大部分が無免許に近い医師だったのでしょうけど・・・腕と免許、あるのはどっちがいいかしら。
1997年の返還を前に、多くの人の反対の中あっという間に取り壊された九龍城砦
その名の通り、昔むかしの清朝の時代・・・ここは城砦でした。
役人や軍隊が駐屯して、塩や香木を保管する場所として利用していたと言われています。
英国への租借という時代の中、中国と英国という関係の中で生まれたひとつの地区。
違法としてどんどん増築を重ね、巨大な建物として姿を変えたこの中は
香港だけど香港ではない、どこの国にも属さない世界に稀な「国のない場所」だったのです。
今では公園として整備され、昔の面影を残すことはないけれど
返還前の香港を象徴するかのような九龍城砦。
不思議なことに、10年以上たった今でもここの取り壊しを惜しむ声は多いと聞きます。
ちょっと怖い場所のはずなのに、香港の人にはやはりどこか特別な場所なのでしょうか。
衛生的にも犯罪上でも決して好ましい環境ではなかったはずなのですが・・・・。
眺めが絶景で素晴らしかったという九龍城砦の屋上。
実際はテレビのアンテナが張り巡らされていたそうですが、叶うことなら登ってみたいものです。
九龍地区で唯一高いこの屋上、頭の上を飛び滑走路に降り立つ飛行機も迫力ありそう。
中国と英国の狭間という歴史を抱え、そしてその歴史の中をすり抜けるように存在した「城砦」
公園内に展示されている模型を、ちょっと下から見上げて見ると
その頃見えたと同じ九龍城の青空が空いっぱいに広がっていました。
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香港情報担当しています(香港の懐かしスイーツの話)
by mangonaoko
| 2012-04-20 06:52
| 香港だより